十五夜「中秋の名月」
中秋の名月の祭事はもともと中国から伝わり、日本では平安朝以降に貴族の間で盛んに催されました。江戸時代には一般庶民の間でも広く行われるようになり、次第に現在の形に変化しています。では、十五夜(中秋の名月)とはいつでしょうか。旧暦では秋を7月~9月としており、旧暦7月を「初秋」、旧暦8月を「仲秋」、旧暦9月を「晩秋」と区分しました。「仲秋」が旧暦8月の全体を指すことに対し、「中秋」は秋全体の中日を意味し、旧暦8月15日のみを指します。現代では旧暦と暦の数え方が異なるため、年によって十五夜の日が異なりますが、およそ9月の中旬~10月上旬に訪れます。
稲穂の代わりとしてのすすき
月の満ち欠けなどを用いて暦を計算した旧暦では、人々の生活と月は密接につながっていました。特に農作業に従事する人々は欠けたところのない満月を豊穣の象徴とし、秋の収穫の感謝を込めて芋や豆などの収穫物を月に供えました。しかし、稲穂はまだ穂が実る前の時期であることから、穂の出たすすきを稲穂に見立てて飾ったと言われています。
魔除けとしてのすすき
古くからすすきは神様の依り代と考えられていました。茎が中空(内部が空洞)のため、神様の宿り場になると信じられていたのです。また、すすきの鋭い切り口は、魔除けになるとも考えられました。そのため、お月見のすすきには悪霊や災いなどから収穫物を守り、翌年の豊作を願う意味が込められています。地域によってはお月見に飾ったすすきは捨てず、庭や水田に立てたり、軒先に吊ったりして、災いから田や家を守る風習が今でも残っています。